富士通のシンクライアント端末「FUTRO(ヒューロー) MU937」に、同じく富士通のビジネスノートPC「LIFEBOOK U938/s」のマザーボードを移植し、 第8世代Core i5搭載のWindows 11仕様に改造しました。
外観の状態が非常にいいけど本体性能がヨワヨワなパソコンに、外観はひどいけど製品仕様はWindows 11正規対応というパソコンの中身を移し替える作業です。
「こんな作業誰がするんだ」という話ですが、富士通ノートパソコンの分解手順が知りたいという方には参考になるかもしれません。
外観美麗な「FUTRO MU937」を激安で入手

半年ほど前、東京・秋葉原で週末だけ開店する中古ジャンクショップ「(旧)キャプ」さんというお店で、富士通の「FUTRO(ヒューロー) MU937」というちょっとレアな中古パソコンを、約6,000円という激安価格で購入しました。
この「FUTRO MU937」というモデルは富士通のシンクライアント用端末で、OSは通常のWindowsではなくWindows 10 IoT Enterpriseという業務専用のもの。本来は業務用サーバに接続しないと使えない代物です。が、通常版のWindows 10もインストール可能な製品です(Windowsのライセンスは別途用意が必要)。
外観は超美麗!しかしスペックがヨワヨワ

購入したMU937は約6,000円という激安価格でありながら、外観が非常にキレイな状態でした。
ほとんど使用感のない超美麗コンディションで、純正のACアダプターも付属。見た目はとても6,000円の中古パソコンには見えません。
しかしスペックはヨワヨワ。
メモリ/ストレージは4GB(空1)/128GB、CPUは第7世代のCeleron 3865Uということで処理能力はかなり貧弱。Windows 11にも対応していません。
シンクライアント端末は、データ処理をサーバ側で行うので本体スペックは低くても大丈夫なのですが、普通のパソコンとして使う場合は話が別。
検証用にWimndows 10をインストールしてブログの原稿作成をしてみましたが、ブラウザを立ち上げるだけで10秒以上を要し、Googleドキュメントとスプレッドシート、資料閲覧用のサイトの3つのタブを切り替えるたびに数秒待たされるという状態です。
これはWindowsでの運用はさすがに無理とあきらめて、低スペックPCでも動くChrome OSでも入れようかな?と思っていました。
LIFEBOOK U937/938/939のパーツが流用できる?

でもそこでふと気づきます。
FUTRO MU937は、法人用ノートパソコン「LIFEBOOK U937」と同じ筐体を採用しています。
そしてLIFEBOOK U937は、後継機種であるU938/U939とも同じ筐体らしい。
ということは、Windows 11に対応したU938/U939のパーツ、具体的には第8世代Core i5を搭載したマザーボードを載せ替えることもできるのではないか?と。
そこでネットで情報をいろいろ漁ってみた結果、どうやら行けそうな予感です。
U937/U938/U939の仕様を比較

そうなったらさっそく準備開始です。
まずはLIFEBOOK U937/U938/U939の仕様を比較し、どのモデルが一番良さそうなのかを探ります。
モデル | U937 | U938 | U939 |
---|---|---|---|
CPU | 第7世代 | 第7世代/第8世代 | 第8世代 |
Windows 11 | 非対応 | 一部対応 | 対応 |
メモリ | 4GB~(増設可) | 4GB~(増設可) | 8GB~(増設不可) |
USB-C | 非対応 | 対応 | 対応 |
各モデルの仕様を比較すると、どうやら一番面白そうなのはU938の第8世代CPU搭載モデル。
U937では非対応だったUSB -C(給電可能)に対応し、U939では非対応になったメモリ増設が可能。
そこで、第8世代CPU搭載のU938とU939を中心に、ドナーとなりそうなジャンクPCを探すことにします。
ヤフオクでおあつらえ向きの「難あり」U938/sを落札
そしてメルカリやヤフオクを物色、ヤフオクでおあつらえ向きの「難あり」U938/sを見つけました。
スペックはCPUに第8世代Core i5(8350U)/メモリ12GB(4+8)/ストレージ256GBと理想的。
メモリ増設済みでストレージにはDtoD領域が設定されているようで、工場出荷時の状態に簡単に戻せそう。
管理人はPCのセットアップには可能な限りメーカー純正ツールを使いたい派なので、このあたりもポイントが高いです。
ただし外装やその他の部分は「難あり」。特にディスプレイはかなり状態悪そうですが、外装関連は使わないのでまったく問題ありません。
1円スタートでしたが3,850円で無事落札。別途送料がかかったのでトータルで5千円弱でした。
FUTRO MU937にLIFEBOOK U938/sのマザーボードを移植

それでは移植作業にかかります。
まずはドナーとなるLIFEBOOK U938/s(黒)からマザーボードを摘出します。
背面カバーを外す

背面カバーは12か所のビスを外すだけでパカッと取り外せます。
バッテリーを外す

バッテリーも6か所のビスを外すだけでするっと取り外し可能です。

マザーボードのコネクタ類を外す

いよいよマザーボードの取り外しにかかります。まずはコネクタ類を外していきましょう。
細かい作業になるので、先の細いピンセットなどを使って丁寧に行います。ピンセットは100均で売っているものでOKです。
外すのは上の画像の①~⑧の8か所。順を追って説明します。
※増設メモリとSSDについて
今回はマザーボードに装着されていた増設メモリとSSDをそのまま使わせていただくため、横着してマザーボードから外さずに作業していますが、これは非推奨です。外せるパーツは横着せずに外してから作業しましょう。

① 指紋センサー
マザーボードの左手前にあるのは指紋センサーのコネクタ。結合部分をピンセットで起こすように開くと外せます。配線を外す前後の拡大写真でご確認ください。
コネクタが3つ並んでいますが指紋センサーにつなげるのは左側。取り付ける時に間違えないようにしましょう。

② LEDインジケーター
その右となりはバッテリーやWi-Fiなどの状態を表示するLEDインジケーターにつながる配線。指紋センサーと大きさは異なりますが、つながり方は同じです。コネクタの手前側を起こすように開くと外せます。

③ キーボード
マザーボード手前真ん中やや左にある幅広のコネクタはキーボードにつながっています。
コネクタ左右にある「U」字のくぼみに先の細いピンセットを差し込んで、ゆっくり下に押し下げると外せます。

④ タッチパッド
手前側の真ん中にあるのはタッチパッドにつながるコネクタ。外し方はLEDインジケーターと一緒です。

⑤ スピーカー
手前側の一番右にあるのがスピーカーにつながる配線。これは単純にはまっているだけなのでピンセットでつまんで丁寧に外しましょう。

⑥ 無線LANカード
マザーボード奥の左には無線LANカードがあります。SSDと同じM.2規格なのでドライバーでネジを外すとカードが斜めに持ち上がり、そのままコネクタから外せます。ネジを外す際、勢いでビスが飛んで行ってしまうことがあるので要注意。
外したカードはそのまま、配線ごと本体に残しておいてOKです。
カードの奥に赤黒ケーブルにつながった小さなコネクタがありますが、これは外さないでOKです(私は外してしまいましたが無意味でした)。

⑦ ヒートシンク・冷却ファン
ヒートシンクは三角形の配置になった3か所のネジでマザーボードに、冷却ファンは対角2か所のネジで本体側に固定されています。
ヒートシンクとファンは細かいフィン同士が嵌まっているだけなので、分離するには写真中央下の白いコネクタ(赤丸囲み部分)を外すだけで分離することができます。コネクタは、固いですがハマっているだけなので、ピンセットで丁寧に外せば外れます。
ただ、細かなフィン同士のかみ合わせが結構デリケートなので、分離や組み立ての時に無理にこじってフィンを曲げないよう注意しましょう。
今回はドナー機のU938/s(黒)のファンがかなり汚かったので、ここのパーツはMU937(赤)のものを流用しました。

⑧ 電源コネクタ
マザーボード奥側、向かって右上にあるのは電源コネクタ。
このパーツは、本体表から見えるジャック部分が溝にはまっているだけ。マザーボードにつけたまま一緒に外すことができるので取り外し不要です。

これでコネクタ類は一通り外せました
マザーボードの固定ネジを外す


コネクタ類が一通り外せたら、いよいよマザーボード本体を固定しているネジを外します。
外すネジは12か所。
奥側に2か所隠れているネジがあるのでご注意ください。


奥左側
マザーボードの向かって奥左側にある銀色のごつい部品。本体とディスプレイをつなぐヒンジ部分にあたるパーツですが、この裏に1か所、マザーボード固定用のネジが隠れています。
表から見えているネジを外し、マイナスドライバーやヘラなどの平らで先の細いものを差し込んでグイっと引き起こすと、ネジが見えてくるのでこれを外します。


奥右側
向かって奥右側、先ほどコネクタ外し⑧で解説した電源コネクタ部の配線下にもネジが隠れているので外しましょう。



これで完了。ゆっくりとマザーボードを外しましょう
FUTRO MU937にマザーボードを移植


マザーボードの移植を受ける側、FUTRO MU937(赤)の方も、背面カバー→バッテリー→マザーボードの順に外していきます。手順は全く同じです。
2台のパソコンをバラすと、周囲は当然ながら2台分のパーツとネジで溢れます。
あらかじめ、2台分のパーツを広げられるスペースと、外したネジを小分けにできる容器を用意しておくことをおすすめします。
バラし終わったら、あとは逆の手順でパーツを組み直すだけです。
配線とネジの場所に注意しながら、組み立てていきましょう。


完成です。もとのMU937(赤)は静脈認証でしたが、ドナー機のU938/s(黒)に装備されていた指紋認証に交換しました。


バージョン情報を確認
ドナー機のU938/sに刺さっていた256GBのSSDにはWindows 10 Proがインストール済みでした。
起動してバージョン情報を確認。機種名が「LIFEBOOK」に代わってますが、メモリも12GB読み込めています。
Windows 10のバージョンが古いですが、このあと工場出荷時の設定に戻してOSを入れ直すので問題ありません。


Windows 11 Proをインストール
作業は割愛しますが、無事Windows 11Proにアップグレード完了しました。


USB-C充電もできる
もとの機種ではふさがれていたUSB-C端子も使えるようになりました。
ただ、せっかくのUSB-C端子を充電のためだけに使うのはもったいないので、もっぱら下記のような丸形端子をUSB-Cに変換するコネクタを使っています。





メーカー純正品ではないので使用は自己責任でお願いします
まとめ


今回、2台のパソコンから使ったパーツは以下の通りです。
外装 | MU937(赤) |
---|---|
マザーボード | U938/s(黒) |
生体認証 | U938/s(黒)※指紋認証 |
バッテリー | MU937(赤) |
メモリ | U938/s(黒)※4+8GB |
ストレージ | U938/s(黒)※256GB |
冷却ファン | MU937(赤) |
富士通のシンクライアント端末「FUTRO MU937」に、同じ筐体を使った「LIFEBOOK U938」のマザーボードを移植しました。
今回はマザーボードの交換でしたが、マザーボードまで外せばキーボードの交換も可能になります。
分解手順の参考になれば幸いです。